高気密高断熱:図面と見積を持って他の住宅会社に行ってはいけない理由

私は住宅設計を本業としているのだが、この業界の困ったところは『図面や見積の持ち逃げ』がよくあること。
住宅会社のキャンペーンで、「間取りや見積を無料でします」ということは多々ある。そうでなくても、契約前の間取り作成や見積については、実質無料での対応になっていることが実態としてある。せっかく作った間取りや見積を持って他の住宅会社に行く。これが私の言う『持ち逃げ』なのだ。
正直、間取りやデザインはどの会社がやっても、ほぼ同じものになってしまう。それなら、当然安いほうがいい。
ところが、最近注目されている高気密高断熱住宅に関してはそうはいかない。
同じ材料を使ったとしても、決して同じ性能が出るとは限らないのだ。
今回は高気密高断熱住宅の図面や見積を、他の住宅会社に持ち込むことは絶対にしてはいけない。というお話です。

スポンサーリンク

前提として住宅会社の不誠実さが引き起こしたトラブル

まずは下の動画を見てもらいたい。
最近テレビで流れた住宅のクレーム・トラブルに関する特集で、表面的には住宅会社の対応に問題がある。

大半の問題は施工不良や発注ミスだったりするわけで、それに対しての住宅会社の対応が悪いのは誰の目にも明らか。
クレーム産業とまで呼ばれる住宅業界だが、こういったミスについては徹底的に直す以外に解決策は無いのだ。
口先だけの説明やお金で解決するなど、必ず後から再発することになる。これは住宅会社および施主の双方に言えること。
そしてこの動画を見て、私個人の感想としては施主側にも問題があるのでは?ということだ。

スポンサーリンク

壁の中の結露は高気密高断熱住宅の失敗

先ほどの動画の中で、私が注目しているポイントは『壁から滴る液体』
結露とのことだが、おそらくは壁の中で発生した結露水が、合板など木材のアクと共に流れ出たのだろうと推測される。
そもそも壁の中の結露が問題になるのは、高気密高断熱住宅を失敗したときである。

普通の住宅でも壁の中で結露しているだろうが、家全体でじんわり起こっていることであり、知らない間に乾いていることもあるだろう。
ところが、高気密高断熱住宅ではそうはいかない。
断熱材、あるいは気密処理が甘いところに集中して結露が発生する。一点集中なので、そこだけ大量の結露水が発生するわけで、外壁から滴り落ちるのも納得できる。
そう、この動画に出てきた家は高気密高断熱住宅の典型的な失敗と思われる。

簡単にはできない高気密高断熱住宅

今回の動画、同じ香川県ということで特に注目して見たわけで、気になったのは結露と共に外壁が塗壁であること。塗壁の下地に断熱材を使う2重断熱を採用していると思われる。
その他にも内部の仕様など、あのメーカーの仕様に近いなと思ったが、細部の仕上がりに違いがあった。
つまり、高気密高断熱の高級メーカーの仕様を他の住宅会社に持ち込んだのではないかと推測されるのだ。

ここからは良くある話として読んでほしい。
施主はマイホームを建てるにあたって、数社のモデルハウスを見たり見学会に参加した。
その中で、高気密高断熱に力を入れている会社を気に入った。
ところが、かなり高額商品であり話を進めるうちに自分たちでは予算が足りず、思い通りにならないと分かった。
家の広さはあきらめたくないし、キッチンなどの設備もあこがれの物を入れたい。

そんな時に出会ったのが地元の工務店(仮)
高級メーカーの高気密高断熱の性能はそのままに、広さも設備も自分たちが思うようにして予算通りにならないか?
相談を受けた工務店は、高気密高断熱の経験はないが何とかなるだろう。価格を合わせれば受注できるなら受けないより、いくらか儲けも出るだろう。
そういった感じで今回の流れになった。※あくまでも一つの例です

施主:高級メーカーの仕様で金額を合わせてくれるならお願いしよう。

工務店:経験はないが、金額を合わせるだけで受注できるならラッキー。

冒頭にも書いた通り、間取りやデザインならこれでも大丈夫かもしれません。
ですが、高気密高断熱住宅に関してはそうはいかないのです。

経験値が無ければ受けない!依頼しない!

断熱に関してはそう難しくないかもしれません。基本的には断熱性能の高い材料で家を丸ごとくるんでしまえばいいだけ。
窓だけ性能が低いなど、一部分だけ断熱性能が低ければ失敗しますが。
それよりも難しいのが高気密の施工。これは材料だけではなく、施工精度が大きく影響してきます。
暖かく湿った室内の空気と冷たい外の空気が触れれば、当然そこで結露が発生します。高断熱化していれば、その影響がより大きいのです。

気密に関しては気密測定という確認方法もありますが、採用している会社は少ないです。
建築途中で気密測定をしながら、ダメなところを修正する。それを繰り返して、住宅会社として高気密高断熱の経験値が上がるのです。

つまり、そういったことをしていない住宅会社が、にわか知識で取り組む高気密高断熱住宅は失敗して当たり前なのです。
押さえるべきポイントがわかってないのですから。
高気密高断熱に関しては、住宅会社も安易に受けてはいけないし、施主としてもよくわからないところに依頼すると痛い目に合うということです。

まとめ

住宅会社と書いてきましたが、ハウスメーカーや工務店、住宅を施工してくれる会社は全て同じです。
高気密高断熱に関しては経験こそがすべて。普段やっていない会社に安易に依頼すると失敗します。
ここはしっかりと見極めて依頼する会社を選ばないといけません。ガッツリ値引きして金額を合わせてくる会社なんてゴロゴロいますので。
今回はたまたま目にした動画から、こういった問題はこれからも起こりうるだろうなと思って記事にさせていただきました。
住宅会社を選ぶ参考にしていただけたら幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました